アニメ・コミックの実写化が止まらない!?成功した実写化作品のポイントは?

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タレメREPORT2015年4月25日11:55 AM

2014年の8月、9月と連続公開された映画『るろうに剣心 京都大火編』と『るろうに剣心 伝説の最期編』が合計で約95億円の興行収入を記録し、同年11月に公開された映画『寄生獣』(前編)が全国映画動員ランキングで初登場1位を記録するなど、アニメやコミックを実写化した作品の勢いが止まらない。

一方で10億円もの制作費をかけて制作されるも興行収入は5億円程度と大きな赤字を出してしまった映画『デビルマン』や、松坂桃李や剛力彩芽といった豪華キャスト陣とハイクオリティなCGで話題を集めた映画『ガッチャマン』も公開初日から苦戦が報じられ、わずか3週間で公開打ち切りになるなど、失敗例も枚挙にいとまがない。このような失敗例から、ネットを中心にコミックやアニメの実写化そのものに対する批判も相次いでいる。はたして成功した実写化作品と失敗した実写化作品との差はどこにあるのだろうか?

80年代以前 ~実写化作品の黎明期~

振り返ってみると、日本映画にはアニメやコミックを実写化した作品が数多く存在する。例えば『サザエさん』や『赤胴鈴之助』、『あんみつ姫』などは、アニメよりも先に実写映画化されており、コミックと実写映画により確立された人気を元にアニメ化された作品と言っても過言ではない。

コミックを元にアニメ化され、実写映画化された作品としては、1974年公開の『ルパン三世 念力珍作戦』が挙げられる。この作品はアニメ『ルパン三世』の第1シリーズを制作した東京ムービーの藤岡豊氏が製作を担当しており、アニメシリーズの放映終了後に公開され、1977年放映スタートのアニメ第2シリーズへの布石となった。その内容自体は原作やアニメとの相違から、現在では怪作としてカテゴライズされ、『ルパン三世』ファンからも半ば無視される存在となっているが、同年の興行収入第2位作品『ノストラダムスの大予言』と同時上映だったこともあり、興行収入的には成功を収め、アニメ化から即実写化という、いわゆるメディアミックス的な展開の先駆けになったといえる。

70年代後半から80年代にかけては、『ルパン三世』と同様にアニメ化と実写化をほぼ同時に展開し、コンテンツそのものを盛り上げようという気運が強く、当時一世を風靡した『みゆき』や『めぞん一刻』、『YAWARA!』などがアニメと実写でほぼ同時に展開され注目を集めた。『YAWARA!』はアニメ化よりも先に実写映画化されており、こちらは同じくコミックの実写化作品として有名な『スケバン刑事III 少女忍法帖伝奇』で主演を務めた浅香唯が猪熊柔を演じたことで話題となった。

当時の風潮を調べてみても特に実写化に関する批判は見当たらず、70年代後半から80年代にかけての実写化作品黎明期においては、実写化がおおむね好意的に受け取られていたようである。

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90年代 ~実写化作品の黄金期~

90年代に入るとアニメと実写の同時展開ではなく、コミックを直接実写化した作品が数多く登場し、その多くが大ヒット作としてシリーズ化されることとなる。

1988年に『男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日』と同時上映でスタートした『釣りバカ日誌』シリーズは、コミックとは大きく異なる展開を見せたが、『男はつらいよ』シリーズの山田洋次監督の脚本が幅広い層に受け入れられ、20作もの作品が作られる国内における実写化作品史上最大のヒット作となった。2002年には実写映画シリーズの好評を受け、原作コミックのテイストを重視したアニメ版も作られ、こちらも一定の人気を博している。

『釣りバカ日誌』と同じようなスタイルで「90年代に実写化された作品が後にアニメ化」された例は多い。例えば、反町隆史が破天荒な教師を演じたことで話題となったテレビドラマ『GTO』や、高視聴率を記録した堂本剛主演の『金田一少年の事件簿』などが、オリジナル要素を盛り込んだテレビドラマのヒットを受け、後に原作のテイストを重視したアニメが放映されている。

このように90年代はコミック原作の実写化作品が隆盛を極めており、『ショムニ』や『花より男子』、『難波金融伝 ミナミの帝王』や『味いちもんめ』など、多種多様なジャンルのコミックがアニメ化され、人気を博した。

また、90年代に入ると日本のアニメやコミックが海外から強い注目を集めるようになり、東映がハリウッドで実写映画版『北斗の拳』の共同制作をおこなったり、『シティーハンター』がジャッキー・チェン主演で映画化されるなど、海外での実写化展開もスタートした。しかし、2億円程度と低予算で制作され、チープな出来となってしまった『北斗の拳』も、原作のイメージとはかけ離れた、いわゆるジャッキー映画でしかなかった『シティーハンター』も、どちらも成功とは言いがたく、当時のアニメファンから酷評を受けることとなる。

00年代 ~批判にさらされる実写化作品~

海外での失敗はあったものの、90年代はまさに実写化作品の黄金期であった。この流れは2000年代に入ってからも続き、『ショムニ』の第2シリーズや『カバチタレ!』、『ごくせん』などのテレビシリーズが高視聴率を記録した。また、上戸彩主演で話題を集めた映画『あずみ』も、興行収入こそ8億円とまずまずの結果でしかなかったが、後にアメリカでも公開されるなど一定の評価を得ていた。

しかし、実写化作品は2004年に大きな転機を迎えることとなる。同年に公開された実写映画『CASSHERN』と『デビルマン』が酷評を呼び、『デビルマン』に関しては冒頭で記載したように興行的にも大失敗となった。両作品が酷評の的となった大きな原因は、豪華キャスト陣や美麗なCGを謳いながらも、原作とはかけ離れたストーリー展開であったり、監督や脚本家が原作にそぐわない作り手側のメッセージを無理矢理詰め込んでいたことで、期待を裏切られた原作ファンがネガティブキャンペーンをおこなったことが挙げられる。

これを機に、アニメやコミックの実写化作品に対するネガティブなイメージは強くなり、同じく2004年公開の『キューティーハニー』や『NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE』といった作品にも批判が相次いだ。

翌2005年に公開された『あずみ2 Death or Love』も批判にさらされ、興行収入は1作目を下回る5億円程度という結果となってしまった。こちらも、原作のストーリーをベースにしていた1作目から、映画オリジナルのストーリー展開にしたことで批判が集まり、ネットを中心にネガティブな批評が相次いだことが失敗の原因とされている。

このように2000年代に入るとネットを中心とした口コミによる批評は無視できないものとなり、原作ファンを裏切るようなストーリーや設定の大きな改編は受け入れられず、ネガティブキャンペーンを生む土壌が形成された。

その最たるものが、2009年3月に日本で先行公開されたハリウッド映画『DRAGONBALL EVOLUTION』である。悟空が高校生として登場したり、ブルマが派手なアクションを演じるなど、原作とはかけ離れた世界観やキャラクター設定は公開前から批判が多く、日本では興行収入10億円程度と想定を大きく下回った。アメリカでも不振を極め、最終的には東南アジア圏でのヒットにより、なんとか持ち直す形となったが、世界中で大ヒットしたアニメ・コミック作品の実写化としては大失敗と言えるだろう。

『DRAGONBALL EVOLUTION』の失敗はやはり、作り手側のクリエイター気質が生んだ改編であり、原作ファンに「原作を尊重していない」と判断され、口コミで批判が伝播して言った結果と言えよう。

事実、同年に公開された『ヤッターマン』は、原作のキャラクター設定をそのままに、イメージに近いキャスティングをおこない、オリジナル要素を取り入れつつも、原作の展開をイメージさせるストーリーで、原作ファンから好評を博した。最終的には31億円の興行収入を記録し、『DRAGONBALL EVOLUTION』に大きな差をつけることとなる。

実写化作品成功の秘訣と今後の実写化作品

あらためて近年の成功例を見てみると、イメージに近いということで当時はまだ無名だった松山ケンイチを主人公・夜神月のライバルであるL役に起用した『デスノート』や、佐藤健が体を張った豪快なアクションで主人公・緋村剣心を演じた『るろうに剣心』、ルパンを演じた小栗旬自身も「酷評を覚悟している」とコメントしつつも、アニメのイメージを大事に実写化された『ルパン三世』など、原作のキャラクターやテーマを大事にした作品が多いことがわかる。

一方で『ガッチャマン』や『SPACE BATTLESHIP ヤマト』など、豪華キャスト陣と美麗なCGを謳った作品は公開前から批判の対象となることが多く、「キャストやCGを押している時点で原作を大切にしていないのでは?」という疑いの目を向けられやすい。

ネットによる口コミの力が無視できない大きな力となっている現在、原作ファンからの批判はそのまま作品のネガティブキャンペーン化につながり、作品自体の成否を大きく左右することとなる。そういった意味でもやはり、実写化作品を成功させるために必要となるのは「原作のテイストを大事にした作品制作」であり、作り手側のクリエイター気質を原作が持つテーマと上手くリンクさせることが重要となってくる。

事実、成功した多くの作品が原作のイメージを大切にしつつも、実写化ならではのオリジナリティを含んでおり、Lを主人公とした『デスノート』のスピンオフ作品である『L change the WorLd』は、オリジナルのストーリー展開でありながらも大きな成功を収めている。

このように原作のテイストを大切にすることで新たなオリジナルストーリーを作り出す手法が確立される一方で、評論家を中心に「原作をそのまま実写化することに意味があるのか」といった意見や「実写作品ならではの見せ方もあるはず」という意見もあり、原作をベースにしつつもオリジナリティ溢れる実写作品を望む声もある。コミックの初期設定を拾いつつも、実写作品としてオリジナリティ溢れる展開を見せ続けた『釣りバカ日誌』のように、今後、アニメやコミックを原作とする新たな大ヒットシリーズが登場することを期待したい。

文/東藤七瀬

 

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