あの個性派俳優の意外な経歴!ドラマを彩る名脇役俳優たちのルーツを辿ってみた

タレメreport2016年4月27日9:55 AM

個性派俳優たちはキャリアも特殊!?

日本映画やTVドラマ、その世界観を形作るためには、主役はもちろん、その周囲を固める脇役たちもとても重要である。独特の雰囲気を持つ脇役俳優には、個性的で他とはひと味違った意外な経歴を持っている者が多い。今ではすっかり役者や監督としてのイメージの強いビートたけしとて、そもそもお笑い出身である。

同じくお笑い系から出てきた俳優としては竹中直人も『ぎんざNOW!』の素人ものまねオーディション番組出身。この番組内の企画から生まれたコントユニット、ハンダースのアパッチけんは現在中本賢と改名、2時間ドラマなどで活躍している。

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個性派俳優・でんでんもお笑い出身!?

『あまちゃん』などでのひょうひょうとした叔父さん役など、近年よく見かけるようになったのが、でんでん。彼はそんなイメージとは真逆の役も演じている。実際の殺人事件を題材とした『冷たい熱帯魚』では人を金のために続々と殺害し、死体処理時に「ボデーを透明にするんだよ!」と名言を連発する異様なポジティブさを持つ殺人者を演じている。お笑いオーディション番組『お笑いスター誕生!』出身であるでんでん。この番組からはとんねるずブラザー・トムなど多くの才能が輩出されている。そう考えるとお笑い→役者の転向は多いのかもしれない。

サブカルから個性派俳優に転身した3人

他の業種にも役者の世界に入った人たちは多い。まず有名なところではピエール瀧。『龍馬伝』や『あまちゃん』など、映画でも『進撃の巨人』など日本映画界で大活躍しているが、彼はなんといってもテクノユニット・電気グルーヴのメンバー。楽器を担当せずパフォーマンス&ボーカルのみの活動が、後の演技に生かされているのかもしれない。

リリー・フランキーも瀧と共に『凶悪』で共演、殺人事件の裏で糸を引く「先生」を演じていたが、元は漫画家であり、イラストレーター。代表作のアニメ化『おでんくん』もあるが、今では『そして父になる』などで日本映画では欠かせない存在になっている。

『プロジェクトX』のナレーションや、『御法度』などで印象に残る怪演を見せていた田口トモロヲは、瀧同様ケラリーノ・サンドロビッチの立ち上げたインディーズレーベル「ナゴムレコード」の出身ミュージシャン。「ばちかぶり」のボーカルであり、さまざまなパフォーマンスが伝説に残っている。

スターらしからぬ演技が話題となった玉置浩二

音楽業界という点ではこの人も挙げておかねばならない。それは玉置浩二だ。TVドラマ『あいのうた』での笑顔が強く印象に残る彼だが、実はその前に『世にも奇妙な物語』や『実録犯罪シリーズ 最後のドライブ』など多数のドラマにも出演している。後者は誘拐殺人に手を染めた夫婦の逃避行を描き、玉置は気が弱く優柔不断な夫を演じ、室井滋扮する気の強い妻にひっぱられてズルズルと凶行にはまっていくが、いつしか大胆に犯行を重ねていく…という難しい役を演じきっていた。かつて主演した映画『プルシアンブルーの肖像』は、彼のアイドル映画だと思ったら実はホラー映画で、変貌する主人公を玉置自身が特殊メイクで熱演していた。彼にはぜひまた個性的な演技を披露してもらいたいものだ。

朗らかなイメージとは正反対の役が多かった地井武男

以上、「異業種出身の個性派俳優たち」を挙げてきたが、次は「世間に定着しているイメージとは異なる役を演じていた個性派俳優たち」についても紹介していきたい。

まずは『ちい散歩』でタレントの散歩番組を先駆ける存在となった地井武男について。地位といえば笑顔が印象的で、穏和なイメージがあるが、かつてはギラギラと欲望をむき出しにした役がとても多かった。『犬神家の一族』における連続殺人の最初に、斧で首を切断され菊人形に頭を乗せられ惨殺される、金に汚い長男を演じているのは地井だ。『新・女囚さそり 特殊房X』ではさそり役の夏樹陽子とともに手錠でつながれて『手錠のままの脱獄』をしてさそりを罠にかけたり、いつしか惹かれあって協力したり…といった難しい役どころを演じるなど、散歩の時の柔和なイメージとは真逆だ。

正義の味方、「黄門様」は悪役俳優だった!?

同様にイメージと真逆な役者を多く使っているのが意外にも『水戸黄門』。初代の東野英治郎も横溝正史の『獄門島』などで妾を多数作って、後に作中で起こる殺人の大本となる諸悪の根元をよく演じていた。それは2代目黄門、西村晃も同様で、かつては悪役専門役者であった。黒澤明の名作『七人の侍』のリーダー格、勘兵衛がその腕をみせつける冒頭のシーン、西村は女子供を人質に立てこもっている山賊役で、籠城が続いて腹が減り、手渡された握り飯につられ虚を突かれて刺し殺される…という、まさにかませ犬的な役。また、松方弘樹主演の『脱獄広島死刑囚』は脱獄にとりつかれた男を描き、板尾創路の『脱獄王』のベースにもなった作品だが、西村は松方とともに脱獄を遂げるものの、シャバにでた瞬間にもよおしてしまい、用を足しに茂みに入り、道路に出たら唐突にやってきたダンプカーに轢かれて死ぬ…という忘れようのない出演の仕方をしている。また放送できない幻の名作として有名なカルト作『怪談せむし男』でも皆を恐怖のドン底に突き落とす怪人を怪演している。双方とも後の好々爺然としたイメージからは全く想像もできない役柄だ。

演技だけでなく経歴もアクの強い生瀬勝久

『トリック』での矢部謙三警部で印象に残っている生瀬勝久の場合は、少々異色だ。そもそも彼は昔、「槍魔栗三助」という芸名だった。とにかくインパクトのある名で人の記憶に残ろうとする、そんな気持ちがあったのだろう。そんな彼、実は意外な他業種の仕事を手がけていたことがある。それはコンピューターゲーム。格闘ゲーム『餓狼伝説』でテリー・ボガードや敵役のギース・ハワードなど、男性キャラの声を多く担当している。ゲーム内でも同一人物が当てているとは思えないほどの演じ分けで、すでに役者魂を感じさせる。ちなみに、このシリーズは後に有名になる人々を多く起用していて、千葉麗子浜崎あゆみなども声を担当している。しかしこういった仕事は役者の公式プロフィールからは消されていたりすることが多い。「黒歴史」などという言葉もあるが、むしろユーザーの興味を広げることに繋がるので、個人的にはぜひとも公開してほしいものである。

「個性派俳優」と一括りにするのは簡単だが、それぞれが積み重ねてきたキャリアや、内に秘めた魅力が、彼らの個性的な演技に繋がっているようにも思える。映像作品の裾野を広めるためにも、マルチな才能を持った個性派俳優たちの参入に今後も期待したいところだ。

 

文/多田遠志

映画ライター。『映画秘宝』ほか各種媒体にてコラムを執筆中。
LOFTグループのライブハウスなどで定期的にイベントを開催している。

 

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