【秋ドラマレビュー】『サイレーン 刑事×彼女×絶対悪女』の魅力とは?

#木村文乃#レビュー#ストレート#サイレーン#菜々緒

タレメREPORT2016年1月28日11:55 AM

視聴率的には関東平均9.2%という結果でしたが、Twitter 民を中心に話題となった2015年秋ドラマ『サイレーン 刑事×彼女×絶対悪女』。もうご覧になりましたでしょうか?

原作とは少し違う最終回ではありましたが、原作の世界観やキャラクターの性格を崩さず、斬新な結末となっており、ドラマ好きも原作好きも納得するようなラストでした。

今回は、改めてこのドラマ『サイレーン 刑事×彼女×絶対悪女』の魅力についてご紹介させて頂きます。

【※一部、作品の内容や展開などネタバレを含みます。ご注意下さい。】

ストレートな女性心理に振り回される人々

このドラマは漫画が原作です。原作者、山崎紗也夏さんにとっては三度目のドラマ化。『サイレーン』の掲載雑誌自体は男性向けですが、原作者が女性なだけあり、女性の感情、心理変化などが非常に細かく表現されています。

彼女の初期の作品には、虐待で人格が破壊された美人女教師が、自己保身のみで他人の感情を無視した言動をし続ける問題作『マイナス』などがあります。

「嫌われたくない」「トラブルに巻き込まれたくない」という感情は誰にでもありますが、それを自己解決せずに外に出して解決しようとしたらどうなるのか?思うがままにやったらどうなるのか?そんな、色々な意味で人の嫌な部分を赤裸々に出した衝撃的な作品です。

その衝撃的な問題作があってこその『サイレーン』ではないか?とファンの一人として強く感じます。実際に『サイレーン 刑事×彼女×絶対悪女』で菜々緒さんが演じた橘カラも“トラウマの塊”です。

「もっと美人になりたい」「もっと人気者になりたい」「もっと」「もっと」という気持ちを全て叶えていく為には、問題を排除するしか方法を知らないカラ。「殺したい」という欲望ではなく、「殺すこと」は目的を達成させるための一つの手段でしかないのです。

基本的に『サイレーン 刑事×彼女×絶対悪女』の悪女、橘カラは、人の気持ちなどどうでも良いので、ある意味自由です。「どう見られるか」は気になりますが、ダメだったらその人を排除すれば良い、それだけなのです。その自由さや異質さが、彼女の裏を知らない人にとっては、あたかも「自信に満ちた」「誰にでも好かれる」「人とは違う特別な人」という印象になるのでしょう。

また、カラの犯行は緻密ではありますが、部分的に単純で、人を罠にはめる際もそれなりに穴があります。ただ単に美人だから、彼女が魅力的だから信用されているだけであり、流動的な運や人の気持ちで、結果的に完全犯罪へと繋げます。

人がどうして自分に屈するのかわからなかった『マイナス』の恩田とは違い、カラは「どうして人が自分に屈するのか」が分かっているだけ、余計に“困ったちゃん”と言えるかもしれません。しかし、その自信に満ちた彼女の行動や表情は、どうしても人を惹きつけてしまうのです。

イライラムカムカさせるのは名女優の証拠!ドラマの中の印象的な悪女10選!

淡々とした菜々緒さんの演技と、表情豊かな木村文乃さんの対比

最終回までご覧になった方はご存じかと思いますが、実は二人には秘密の関係があります。同じように生まれたのに、片方は刑事の家の子として素直に、片方は理不尽に悶々とした人生を送ります。

里見という警察官の彼氏がおり、いちゃラブしながら仕事も充実している猪熊(木村文乃さん)と、整形を繰り返し、都合が悪くなると人生をリセットしてきた橘カラ(菜々緒さん)。

ストレートに人の好意や「偶然」を信じる猪熊に対し、猪熊に近寄るために淡々と、平気で何人もの人を殺すカラ・・・。どちらも性根は素直でまっすぐな女性なのです。“無邪気”と“邪気”ではありますが、Wヒロイン2人のまっすぐな瞳はとても印象的でした。

振り回される男代表!里見の活躍

アクションもこなす魅力的で美しいWヒロインとは対照的に、少々地味なイメージがぬぐえない里見(松坂桃李さん)も、なかなか良い味を出していました。

唯一“真実”にたどり着く里見は、視聴者の代理人、代弁者でもあります。たくさんの罠にはめられ、ストーカーや殺人未遂の扱いまで受けてしまう不憫な里見・・・。しかし、一途に猪熊を守ろうとする意思や、魅力的なカラに決して(異性としての)興味を示さない一貫した態度など、実に男らしい青年です。

途中、カラは里見を殺害しようと試みるものの失敗。しかし、それまでも彼を殺すチャンスはたくさんありましたし、殺害に失敗した後も二度ほど殺害のチャンスはあったはずです。しかし、「自分の本性がばれている」という危険な存在の里見を、彼女が早々に排除しなかったのは、“猪熊の想い人”に興味があったのか、もしくは“里見自身”に興味があったのか・・・。少なくともカラにとって、 “他の男性とは違う何か”が里見にあった事は間違いないでしょう。

人は人の評価をどうしても気にする生き物です。周りの人が評価している「橘カラ」という女性にはどうしても評価を与えてしまいますし、そんな女性が頼ってきてくれたら、それだけで自分の力すら過信してしまうもの。

その人間心理を巧みに利用するカラの魅力、そしてそのカラを魅了する猪熊や里見のまっすぐさこそが、『サイレーン 刑事×彼女×絶対悪女』という作品の魅力ではないでしょうか?また、カラに魅了されていく人々の人間らしさが視聴者の共感を呼んだのかもしれません。今後の再放送や出演者の次回作が楽しみです。

文/藤原ゆうこ

 

Page Top