『わた定』が提示した正解のない問いかけ

NEWS2019年6月28日12:00 PM

火曜ドラマ『わたし、定時で帰ります。』(C)TBS

『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)の最終回が6月18日に放送された。本作がこれまで描いてきたのは、真面目で要領が悪く、自分の居場所がなくなるのではないかと焦りを感じる女性や、産後に職場復帰し、遅れを取り戻そうと必死で空回りするワーキングマザー。すぐ「辞めたい」と口にし、「自分なんて何の役にも立たない」と感じている新人や、人生に楽しみがなく、会社に住みついた状態のエンジニアなど。実にさまざまな世代、さまざまな境遇にある人々の仕事に対する考え方の違いや、働き方への悩みを描いてきた。

■種田のデキるゆえの悲しみや孤独、苦しみの背景が丁寧に描かれた

 しかし、終盤にきて物語に厚みを加える大きな役割を果たしたのが、向井理演じる、結衣(吉高由里子)の元カレで上司・副部長の種田と、ユースケ・サンタマリア演じる部長の福永である。前者は、ネット上で「理想の上司」という声が多数あがり、番組終了が近づくにつれて「ロス」が叫ばれていた。そして後者は、保身で無責任で部下に無理難題を押し付ける、職場で唯一の嫌なヤツに見えていたが……。

【番組カット】手を握り…吉高由里子を見つめる向井理

 種田は、結衣たちにとって、パワハラ・セクハラ体質のクライアントに対抗すべく、社内の根回しをして駆けつけてくれたり、他の社員たちの尻拭いをしてくれたり、窮地でいつも助けてくれるヒーローのような存在だった。だが、単なる「仕事がデキる理想的な上司」で終わらないところが、『わた定』の巧みさである。そこには、デキるゆえの悲しみや孤独、苦しみを抱えている背景が丁寧に描かれていた。

 例えば、種田の弟にとって、優秀な兄はコンプレックスを抱かせる存在であり、「寝なくても死なない」「死ぬ気でやれ」という言葉が、疲弊しきった弟を追い詰め、引きこもりになるきっかけとなる。「デキる人」「強い(と思われる)人」が、悪気なく、自身の能力やスピード感、キャパシティを基準に考えてしまうことで、周りにプレッシャーを与えたり、劣等感を抱かせたり、追い詰めてしまったりすることは、現実の世界でも、ままあるものだ。

 能力、体力、キャパシティ、考え方、すべてが1人ひとり違っているし、職場での立場も、背後にある家庭での立場・環境なども違う。だからこそTKO木下演じる“管理の鬼”石黒が言うように、「仕事がデキる人のところに、仕事が集まる」のは常。そして、「デキる人・やれる人がやれば良い(ただし、それは正当に評価され、正当な報酬をもらえることが必須だが)」と思ってしまいがちだ。

 しかし、ここで欠如しているのは「デキる人」が必ずしも「やりたい人」ではなく、「声をあげられないだけ」という場合もあるということ。「ワーカホリック」に見える人も、実は「誰のことも裏切りたくない、傷つけたくない」だけなど、別の事情があるかもしれないこと。また、本人は能力的にも体力的にも精神的にも余裕があり、ある程度無理ができてしまうとしても、1人に仕事が集中してしまう状況を悲しむ人、不安に思う人が周囲にいるという視点だ。これは案外見落とされやすい気がする。

■最後の最後で再び考えさせられた「仕事をする理由」

 一方、無茶な発注を受け、部下たちを苦しめるばかりに見えていた福永も、実は部下をノセるのがすごく上手いことが終盤で描き出された。いわゆる「やりがい搾取」で、部下たちの気分を上げさせ、社外の飲食店などでサービス残業させていたのは、明らかにNGだし、そんなことが続くわけがない。しかし、「やりがい搾取」自体は悪いことではあっても、福永にノセられたときの部下たちのイキイキした様子、充実した表情を見ると、悪いことばかりではない気がしてしまう。

 そして、福永の「仕事が好き、自分には仕事しかない、それってそんなに悪いこと?」という問いかけが、胸に突き刺さる。確かに、仕事でしか得られない達成感というのはあるし、プライベートを大切にする生き方と同様に、仕事にすべてを捧げる生き方だって、認められて良い気はしてきてしまう。さまざまな人の仕事に対する考え方の違いや価値観の違いを見てきて、少しずつわかってきた気がしていたのに、最後の最後にきて、また「仕事をする理由」を考えさせられることになるとは。

『わた定』が描いてきた「働く人たち」は、単に「助ける側・助けられる側」では成り立っていない。それを強く感じたのは、いつも同僚や後輩などを助け、尻拭いをしてきた有能な結衣が、種田の弟の自殺を思いもよらぬ理由で思いとどまらせていたこと。

 そして、その理由が、温かい励ましでも、的確なアドバイスでもなく、「二日酔いで、会社を簡単にズル休みする→こんなに簡単に会社を休む人がいるんだと思った」という、ダメダメな面だったことだ。人は思いも寄らぬところで誰かを傷つけたり、逆に、どうでもいいことで誰かに勇気づけられたり、救われたりする。「仕事をする意味・理由」が人それぞれで、正解がないように、人と人の関わり方にもやっぱり正解なんてない。
 だからこそ大変で、だからこそおもしろいのだと、『わた定』を観ながら、しみじみ感じた。
(文/田幸和歌子)

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