ジャニオタ男子が見たジャニー氏

NEWS2019年9月4日8:40 AM

著書『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)を発表した霜田明寛氏 (C)oricon ME inc.

 ジャニー喜多川氏がこの世を去り、芸能界はもちろん、多くのジャニーズファンにも激震が走った。そんな中、一般的には珍しい“ジャニオタ男子”であり、WEBマガジンの編集長を務める霜田明寛氏が、著書『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)を発表した。まるでビジネス書や自己啓発本のようなテイストでタレントを紹介し、ジャニー氏の仕事哲学にも迫る本書。生粋のジャニオタでありながら、冷静な視点で分析する霜田氏は、ジャニー氏の功績をどう見るか。本書の意図から、ジャニーズの現在地までを聞いた。

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■“ジャニオタ男子”に理解のない世間、仕事でも偏見のまなざし

 霜田氏は1985年生まれ。9歳でSMAPに憧れ、18歳でジャニーズJr.オーディションに挑むも「16年経った今もまだ返事は来ない」と言う。彼がジャニーズにハマったきっかけは、母親だった。「母がSMAPファンだった我が家では『愛ラブSMAP!』(テレビ東京系)が流れていたし、小学5年生のころに始まった『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)は、僕も熱心に観ていましたね」(霜田氏/以下同)

 とはいえ、当時“ジャニオタ男子”は珍しく、霜田氏も中学生のころまではジャニーズ好きを友人に言えずにいたという。だが高校時代、長瀬智也主演ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』や岡田准一主演『木更津キャッツアイ』(共にTBS系)など、俗に言うクドカン(宮藤官九郎)作品が一世を風靡する。

 「クドカン作品は男の子も観るドラマでした。機は熟したと感じ、徐々にジャニーズの“布教”をスタート。『木更津キャッツアイ』の5人みたいになりたいとか、バンビ(櫻井翔)も童貞だからとか(笑)、ジャニーズは男子にも身近に感じられるようになったんです」。

 ただ、それでも世間の“ジャニオタ男子”への理解は少なかった。現在はWEBマガジン編集長を務める霜田氏だが、駆け出し時代にライターとして出版社へ売り込みに行った時も、「『ゲイなの?』とセクシャリティを疑われました」と、偏見があったことを明かす。

■知名度と説得力が相関関係に、「駆け出しの社会人に勧めたい」との声も

 霜田氏は、以降もジャニーズの情報を収集。その集大成が本書『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)となる。第1部『努力の16人』では、中居正広、木村拓哉、長瀬智也、国分太一、岡田准一、井ノ原快彦、堂本剛、堂本光一、櫻井翔、大野智、滝沢秀明、風間俊介、村上信五、亀梨和也、伊野尾慧、中島健人を解説。ファン向けというよりも、働く人々へ向けた自己啓発本のような様相を呈している。

 「この16人の選出の基準は、新書を手に取る可能性のある40~50代の男性も知っていること。もちろん、自分の好きなジャニーズJr.にページを割きたい衝動も生まれましたが(笑)、ジャニーズファンではない方を読者に想定した場合、知名度と説得力が相関関係にある気がしたんです」。過去に携わった就活本のノウハウも活用した。ベストセラー『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)を執筆した師・水野敬也氏の教え「読んで実行しようと思うまでが本の役割」にも従った。動物占いのように16タイプで成功法則を挙げ、そのどれかに読者個人が当てはまるよう分類。さらに、就活学生や社会人の悩みに応えるように実用的に落とし込み、“どう生きるか”という解決策までを7つのパターンで示した。

 「読者からは、『駆け出しの社会人やビジネスパーソンにお勧めしたい』『ジャニーズじゃない場所でもこのスキルは生かせる』などの言葉をいただきました。よく知らない大人に、どう生きるかと言われても頭に入ってこない。ですが、中居正広さんたちのような実績あるスターの言葉を通すことで、じゃあ自分も…と受け入れてもらいやすいと考えました」。

■SMAP以降の活躍で、日本人に刷り込まれた“新しいアイドル像”

 16人に共通している点は、「目標値が高く、自分を未完成と自覚している」こと。例えば、かつて亀梨和也は周囲と比べて容姿が劣っていると感じ、努力を重ねてきたという。「狭い社会で満足しているうちは、見えている世界も限られる。絶対評価で自身の価値を高く設定すると、成長が止まるんです。実際に亀梨くんの容姿が劣っているかどうかではなく、彼自身が劣っていると自覚していることが重要なんです」と持論を展開する。

 「SMAP以降の活躍で、日本人は30年近く“新しいアイドル像とは何か”を目撃してきたことになります。そして2000年代にはAKB48が登場し、総選挙やドキュメンタリーが話題になったことで “アイドルだって頑張っている”という認識が出始めた。ラクをしている人は10年も残れません。近年で、そういったアイドル像が日本人に刷り込まれたと考えます」。

 冷静な観察眼を持ちながら、今も年季の入った“ジャニオタ男子”でもある霜田氏が、ジャニー喜多川氏の訃報を聞いたのは、書籍化の作業が大詰めを迎えた頃だったという。「滝沢秀明さんはジャニーさんを父と捉えていましたが、僕たちファンは滝沢さんをはじめとしたタレントの背中を見て育っており、兄や父のような想いを持っている。なのでジャニーさんの訃報には、祖父を亡くしたような大きな喪失感を味わいました」。

 そんな霜田氏は同書の中で、ジャニー氏を起点に日本の芸能史が変わったと論じている。「ジャニーさんには前例を作り出す力があった。男性が歌って踊るという概念がなかったところに、ジャニーズという文化を作り出した。また、SMAPではフリー・ソウルを、嵐ではラップを…と、当時の最先端の音楽を取り込み、歌詞にも大人に通用する重厚なテーマを込めた。ジャニーさんの脳内はアート。大衆とは真逆の概念ですが、そこに“美少年”という大衆向けの嗜好を組み込むことで、抵抗感なく人々にアートを届けた。日本の大衆の音楽や思考のレベルを上げていった功績は大きいのではないでしょうか」。

 さらに、ジャニー氏の“育てる力”にも言及。その人材の選び方には、経営学者ピーター・ドラッカーの著書『マネジメント』との共通点を挙げている。また、育成法としては“引き出す教育”であるジャニイズムを、それを生かす方法としてのブランド力と競争システムを論述。これらは芸能界のみならず、一般社会の組織づくりにおいて、大いに参考になる概念だと言っていい。

■揺れるジャニーズ、「YOU、やっちゃいなよ」の精神があれば…

 近年、ジャニー氏の訃報をはじめ、様々な出来事や報道に揺れ動くジャニーズを、霜田氏はどう見ているのだろうか。彼の“ジャニオタ”歴の原点となるSMAPの解散については、「永遠に続くと思っていたものが永遠ではないと知った」と霜田氏。昨年発表された嵐の活動休止については、「大野さんの休みたいという意思を受け入れての、解散ではなく休止。Sexy Zoneの松島聡さん、King & Princeの岩橋玄樹さんらのパニック障害での休止もそうですが、ジャニーズの“働き方改革”が見えてきます。少なくとも、SMAPの解散以前では考えられなかったこと」と、芸能事務所としての変化を分析する。

 また、未来についても「ジャニーさんが亡くなった今後も、私は心配していません」と明言。ジャニー氏の育成法の一つに、ガチガチにプロデュースせずにタレント自身に考えさせて任せる「YOU、やっちゃいなよ」の精神があるが、これによりタレントは独り立ちできる強さを持ったという。なかでも、もっともイズムを引き継ぐ滝沢が、若手の育成を担う『ジャニーズアイランド』社長に就任したことには、「まさに適材適所」と話す。

 「そもそも、ジャニーさんの世界観には“ジャポニカ”のような和洋折衷思考があり、それは外国人が喜ぶ日本の姿。実は、ジャニーズは世界に通用するエンタメなんです。多くのタレントがそのイズムを引き継いでいるので、今後も活躍していけるはずです」。

 18歳で受けたオーディションの返事を「今も待っています!」と笑う霜田氏のジャニーズ愛は深い。「ジャニーズのある日本に生まれて良かったと、素直に思います。本書はファンの方に限らず、とくに未来に迷っている方に読んでいただき、物事の見方を考えるがきっかけになればと思います」と同氏。とくにビジネスの中核を担う中年層以降には、いまだ“ジャニオタ”というと偏見を持つ向きもあるかもしれない。だが、そんな色眼鏡を外してみれば、ジャニー氏やタレントたちの生き様には、一般社会にも通じる大きなヒントが隠されているのだ。

(文:衣輪晋一)

【プロフィール】
霜田明寛(しもだ・あきひろ)。1985年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。現在は、WEBマガジン『チェリー』編集長として取材・執筆を行うほか、テレビ・ラジオなどにも出演。三作の就活・キャリア関連の著書がある。

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