本物にしか見えないリアル刺繍

NEWS2019年12月2日8:30 AM

SNSで反響の大きかった「焼き鮭」を主役にした作品。鮭のほかご飯、たくあんも刺繍でできている。制作&写真/yacmii(@yacmii)

 刺繍といえば、布にあしらわれた花々や草木など、乙女でメルヘンなイメージが先行するが、そんな概念を覆す「立体リアル刺繍」がある。一見すると、まるで本物。そんなトリックアートのような作品を手掛けるのは、女性クリエイター・yacmii(ヤクミィ)さん。作品作りの根底に「ニヤニヤ、ザワザワさせたい」という想いがあると話す刺繍家に、制作のこだわりと今後の展望を聞いた。

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■「あれ?そうきたのか!」と、ニヤニヤ&ザワザワさせたい

――見れば見るほど不思議な「立体刺繍」ですが、「立体」の仕掛けはどのようになっているんでしょうか。

【yacmii】 基本的な作り方は「ひたすら縫う」でしょうか…。全ての製作過程は申し上げられないのですが、私の刺繍は針が折れてしまうほどにカチカチに縫い固めてあることが多く、机に張ったゴム板に押し付けるように作業することもあります。織生地のように固く縫い上げることで自立する刺繍が完成します。

――根気とパワーがいるアートなんですね。yacmii作品は、食器や菓子の包装など本物の小物と「刺繍作品」を組み合わせたトリックアートのような撮影方法もユニークです。

【yacmii】 「刺繍だ」とわかりにくく、それでいてわかりやすい…そんな写真が面白いと思っているので、「隠れてるつもりかもしれないけど、バレてるよ!」という、頭隠してお尻が隠しきれていない感じを意識しています。

――確かに(笑)!見た瞬間「おや?」っと違和感を感じて、良く見ると刺繍と分かる。その絶妙なバランスに「クスっ」とさせられます。刺繍の題材も「鮭の皮」「茄子のヘタ」など、ヒネリが効いてますよね。

【yacmii】 鮭の皮、茄子のヘタ…マニアックなところに目を留めていただけて嬉しいです(笑)。本物のようだけど本物にはなれない(食べられたり匂いがするわけではない)ものなので、糸らしさも残したまま絶妙にリアルを表現するのに適したモチーフにこだわっています。

――yacmii作品は、これまでにない「立体」という手法に題材、撮影方法に至るまで独創性にあふれていますが、ご自身ではどんな部分が作品の特徴だと思いますか。

【yacmii】 私らしい作品は少しクセが強いところかなぁと思います。「あれ?そうきたのか!」と見てくださる方をニヤニヤザワザワさせられたら成功だなぁと思っています。もっとキャッチーな作品を作ることができたら幅も広がるのかもしれませんが、ニクイ、マニア受けの部分に切り込んでいることこそ私らしいように思います。

■活動名「yacmii(ヤクミィ)」に込められた想い

――これまで最も反響があったのはどんな作品ですか。

【yacmii】 焼き鮭がお盆に乗った朝食の立体刺繍かな?と思います。「定食屋の広告なのかと思った。」「美味しそうなお店ができるんだなって思った」と言っていただけて嬉しかったです。

――「焼き鮭」は身のスジや焦げ目など細部の表現が見事でした。

【yacmii】 ありがとうございます。食べ物を作る時に意識しているのは「どうしたら美味しそうに焼きあがるかな?」とかそういった料理をするときのような感覚です。箸をすっとさした時に、ポクっと身がほぐれて湯気と香りがふわっと立ち昇るような…そんな光景を想像して制作しています。

――リアルな刺繍を作るために重要なのは想像力なんですね。

【yacmii】 そうですね。それと、観察力と客観視が大切かなと思います。モチーフの実物も用意しますが、客観的に見るためにもまずはその実物をあえて写真に撮りますし、ご覧いただく皆さまの「固定観念」に触れるために、ネット検索で上位に上がった写真を何枚かピックアップして総合的に仕上げていきます。ラフスケッチは仕上がり間際に完成作品を客観的に見るために描くことが多いです。

――ラフスケッチは下絵・設計図ではなく、仕上がり間際に描いているんですね。それにしてもスケッチもとてもお上手! 美大の彫刻科卒業とうかがっていますが、刺繍家として活動される以前は?

【yacmii】 多摩美術大学大学院の彫刻科を卒業後、企業に就職をしていた時期もありましたが、美術表現を諦めきれずお休みには小さな個展を繰り返していました。刺繍と向き合おうと決断したのが2010年。無収入でも1年だけはやってみようと思い、1年乗り切れるだけの貯金をしてから、屋号の「yacmii」を名乗り活動を始めました。

――なぜ“独立する立体刺繍”を目指したんですか?

【yacmii】 目指したというよりも出会ったという方が近いのかもしれません。卒業後、尊敬している大学の教授(石井厚生先生とおっしゃる先生です。)に、「刺繍が楽しくて、刺繍で表現をしていこうと決めました」と報告した時にとても寂しそうな、それでもとっても優しい顔で、「何をしたっていい。でもお前自身を何かの形で表現する時、彫刻家であることを決してわすれないでいてほしいな」と言われました。背筋がピッとなった瞬間でした。

「雑貨」や「工芸」でまとめられがちな刺繍に、これまでに培ってきたアート表現をしっかり織り込んで、自分の目線を誰かに伝えていくことの責任感のようなものを感じました。その結果、現在は立体刺繍(彫刻刺繍)に行き着きましたが、ここからの表現は自分でも未知数だなと思っています。

――作品を通して、伝えていきたいことは?

【yacmii】 何気ない生活の中でクスッと笑ってしまうような幸せな出来事はたくさんあふれていると思うんです。たまには難しいことを後回しにして、肩の力を抜いて、日々のちょっとした「面白い」を見つけてほしい。そのための手助けをする「薬味」のような存在になれたら嬉しいなぁと思います。屋号のyacmii(ヤクミィ)は薬味からとっているんです。

――今後の活動予定と展望を教えてください。

【yacmii】 現在、岡山県の雑貨店「倉敷意匠」で個展をしていますが、来年3月には東京と岐阜でのお披露目も予定しています。来年は活動10年目の節目なので全て新作の個展も行いたいですね。今後は、とにかく細く長く続けていくこと。作りたい作品がたくさんあふれていて、それでも私の刺繍は一点制作するのにとても長い時間がかかってしまうため、まずは一点一点、その頭の中の作品たちを確実に形にしていってあげたいなと思っています。

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