45年目、巨人ウグイス嬢仕事の流儀

#ウグイス嬢#タイミング#マリーン#ホームラン#シンプル

エンタメNEWS2021年4月16日8:40 AM

今シーズン限りでウグイス嬢を引退する読売巨人軍・山中美和子さん(東京ドームの場内放送室にて) 写真提供/読売巨人軍

 3月27日、読売巨人軍(以下/巨人)でウグイス嬢を務めている山中美和子さんは、東京ドームでの開幕第2戦の場内アナウンスを担当。ウグイス嬢として迎える45年目のシーズンが開幕した。今年2月、巨人は42年ぶりに新人ウグイス嬢の採用を発表。794通もの応募から3人を採用した背景には、山中さんの今シーズン限りの引退があった。後楽園球場で、王貞治氏(現福岡ソフトバンクホークス取締役会長)の現役最晩年をアナウンスした経験もあるなど、87年に及ぶ巨人の歴史の半分以上を“球場アナウンス”というかたちで彩ってきたレジェンドが引退を決めた理由とは?また、次世代に伝えたい“ウグイス嬢”としての流儀とは?これまでの思い出とともに、話を聞いた。

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■試合中に何度も場内放送室に立ち寄る長嶋監督の真意

 大の巨人ファンだった母親の影響で野球好きになった山中さん。中学・高校時代は野球部のマネージャーを務め、高校卒業後は、神奈川県高等学校野球連盟に就職した。

「当時の神奈川県の高校野球といったら、東海大相模高校の原辰徳さんが大スター。『3番、サード、原辰徳君』なんてアナウンスしていました(笑)。今は巨人の監督と、場内放送係として携わらせていただいています」

 そして1977年8月、巨人の場内放送係に採用され、球団職員となった山中さん。「45年の中で一番印象に残っている試合は?」と尋ねると、入団してすぐに体験した思い出を語ってくれた。

「入団してすぐ、見習いとして場内放送室に入った日に、王さんが756号ホームランを打ったんです。周りにいたスタッフは皆、世界記録達成の瞬間のために、最初の打席から緊張感をもって準備されていたのですが、見習いの私はただのいちファンとして、ワクワクしている状態で(笑)。自分がアナウンスを担当した試合じゃないんだけど、あのときの興奮と感動は忘れられません」

 その後、山中さんはファンだった王氏が現役を引退するまで場内放送室で、その活躍に寄り添ってきた。

「王さんは実際に接してみても素晴らしい方でした。ただ、現役最後の頃は、その人柄ゆえに、チームの不振とファンからの非難を一身に受けているようなところがあって、頬はこけてげっそりされ、ちょっと怖さを感じました。でも、それくらいの責任感を持っているからこそ、あれほどの成績を残せたのでしょう。その後引退されて、助監督に専任されてからは、穏やかですごくいい顔をしていらして、本当はこういう方なんだよなって思いました」

 同時期にもうひとつ、印象深い思い出がある。当時の巨人の本拠地である後楽園球場の場内放送室はダッグアウトのすぐ隣。そこにだけ冷房が設置されていたために、当時の主力である篠塚利夫(現・和典)氏や中畑清氏らが、涼みに来ては置いてあるせんべいなどのお菓子を食べていたそう。なかでも試合中、もっとも場内放送室に立ち寄っていたのは、当時、監督を務めていた長嶋茂雄氏だったそうで……。

「『お嬢さん、飴ある?』と言って、試合中に5回も6回も場内放送室にいらっしゃるんです。あまり何回もいらっしゃるので、『大きな飴を用意したらいいんじゃないか』という話になって、ある日、そうしてみたところ、監督は『デカイな』と言いながら食べて(笑)。それでもやっぱり何回もいらっしゃるんです。ところが、試合が終わって放送室を出たら、通路に舐めかけの大きな飴がいっぱい置いてあって。球団職員の方に、『監督は本当に飴が欲しくて来ているわけではなくて、試合中にイラっとするようなことがあったときなど、気持ちを落ち着かせるために来るんだよ』と教えられたのもいい思い出です」

■「気にも留めずにひと試合終わっちゃいました」が一番いい場内アナウンス

 巨人の歴史の半分以上を伴走してきた山中さんだが、今年限りで引退を表明。現場を離れるにあたり、感慨や寂しさを感じているのではないかと尋ねてみると、「今は、最後まで間違いを少なく、きっちり完走したいということしか考えられません」とキッパリ。その根底には、現役でいる限り責任感を持って任務を果たすという、選手同様のプロとしての矜持があった。

「引退を決めたのは、危うくアナウンスを間違えそうになってしまってドキドキすることが多くなったからなんです。これまで本当に楽しく仕事をさせてもらってきて、常々『ちゃんとできているうちに辞めたいな』と思っていましたので」

 プロである以上、最高のパフォーマンスを発揮するために、努力を惜しまないところも選手と同じ。山中さんは今でもボイストレーニングに通い続け、コロナ禍で通えない間は、自宅で毎日1時間以上、自主練習を続けていたという。

「歳をとってくると、若い頃よりも努力しないと声が出なくなるんです。腹式呼吸のために腹筋を鍛えることも続けてきました」

 そんな山中さんが45年の間に築き上げてきた場内アナウンスの極意は意外とシンプルなものだった。

「私としてはなんとなく耳に入ってきて、情報は伝わっているけれど、気にもとめないような放送が一番いいかなって思っています。場内アナウンスが注意を引く時って、こちらがミスをして『間違えてるよ』って思われるときなんです(笑)。そういうことはないに越したことはありませんので、お客様にとって、全然気にも留めずに、ひと試合終わっちゃいましたというのが一番理想のアナウンスの在り方だと思っています」

 その考えに至るおおもとには、入団して一番最初に先輩から言われた「場内放送係は審判の代わりだからきっちり伝えなければいけない」というアドバイスがある。そのため、マイクに向かっている間は、一切感情を出さないことを心がけてきたが、キャリア20年を経た頃、こんな変化もあった。

「例えば巨人の選手がホームランを打って戻ってきたときに、ホームゲームだし、ちょっとくらい嬉しそうにアナウンスしてもいいんじゃないかなって思って、少しずつ場内放送に感情を込めるようになりました」

■後輩には自分たちが作り上げた形は押し付けない「思うようにやればいい」

 そんな自身の経験を踏まえ、今年42年ぶりに採用された新人たちには「自分たちがいいと思うようにやればいい」と未来を託す。さらに、現在、選手名の語尾を伸ばす千葉ロッテマリーンズの谷保恵美さん、北海道日本ハムファイターズの杉谷拳士選手の打撃練習を“いじる”アナウンスが印象的な埼玉西武ライオンズの鈴木あずささんなど、特徴的なアナウンスで注目を集める後輩たちが活躍。山中さんは、彼女たちを賞賛しつつ、新しい世代が歴史を作っていくことにも大きな期待を寄せている。

「谷保さんや鈴木さんのアナウンスが素晴らしいと思えるのは、それによってファンの方々がすごく喜んでくださっているから。私たちにとって一番大事なのはそこなんです。今研修などで基本的なことは教えていますが、新人3人に、自分や同僚で2年後輩の渡辺三保さんと全く同じようにやってほしいとは思っていません。私たちもよく他の球場のアナウンスを聞いて、そちらのほうがお客様に伝わりやすいと思ったらすぐに取り入れてきましたし、時代はどんどん変わっていますので、彼女たちにも自分たちがいいと思うことを遠慮なくやっていってほしいなって思います。それぞれの球場ごとにいろいろな特色があってもいいですよね。みんな同じだったらやっぱりつまらないですから」

 さらに新人たちに一番望んでいるのは、「一番のジャイアンツファンであること」だ。山中さん自身もそれを大切にし、“ジャイアンツ愛”が変わることはない。

「始めたばかりの頃、どのタイミングでアナウンスすればいいのかわからなくて、聞いたことがあったんです。先輩からは、『自分が聞きたいタイミングで言えばいい』と言われました。例えばチャンスの場面で4番バッターが打席に入るときなど、ファンは自分の気持ちが高揚するタイミングで場内アナウンスを待っています。同じようにどの場面においても、自分がファンの気持ちで『ここだ』というときにコールすることが大事。自分がファンであればそのタイミングはわかるし、何より好きな仕事は楽しく続けられますから」

「引退後は45年ぶりに、“いちジャイアンツファン”として巨人戦を楽しみたい」と山中さん。今シーズンは5月半ばまで、渡辺さんと2人でアナウンスを担当し、その後は新人3人を含めた5人交代制で、東京ドームに彩りを添えるという。45年かけて培った“レジェンドウグイス嬢”の場内アナウンスが聞けるのも今シーズン限り。野球好きもそうでない人も、この貴重な機会に東京ドームで、場内アナウンスに耳を傾けてみては?

取材・文/河上いつ子

#ホームラン#タイミング#マリーン#アナウンス#シンプル

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