「地下セクシーアイドル」の正体とは?見る者をバブル時代にトリップさせるベッド・インの真価

#下ネタ#トリップ#セクシー#ライヴ#アイドル

タレメREPORT2016年3月11日5:55 PM

ギルガメを彷彿!地下セクシーアイドル、ベッド・イン

あなたがある日目覚めたとき、突然25年前にタイムスリップしていたらどんな気持ちになるでしょう……? そう、中尊寺まいと益子寺かおりによるベッド・インは、見る者を一気に25年前、バブル時代へと連れ去ってしまうような2人組なのです。

ベッド・インの最新シングル「C調び~なす!/ZIG ZAG ハートブレイク」からは「C調び~なす!」のMVが公開されていますが、そこに登場するのは、なんとイジリー岡田。ベッド・インのボディコン衣装とともに、まさに「ギルガメッシュないと」を連想させる世界観なのです。

ベッド・インは「地下セクシーアイドル」と名乗っており、たしかにCDはインディーズ流通です。しかし、2015年9月にはフジテレビ「HEY!HEY!NEO」に出演してダウンタウンと共演するなど、すでに地上波のテレビ番組にも多数出演しており、実際には「地下」というスケールに収まらない活動を展開しています。
彼女たちがそれほどまでに注目されている理由は何でしょうか?もちろん「90年代バブル期のオイニーを撒き散らす地下セクシーアイドルユニット」と銘打っているベッド・インのヴィジュアルのインパクトの強さは言うまでもないでしょう。21世紀、しかも2016年にもなって、ボディコンを着こなしている女性を生で見られるのはベッド・インのライヴ以外ではまずありません。しかし、ベッド・インが多くの人々に注目され、人気を集めている理由は、徹底したセルフ・プロデュースによるキャラクターにこそあります。

 

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お下劣!だけど爽快!

ベッド・インのTwitterやインタビュー、あるいはライヴのMCなど、彼女たちが発信する言葉は、常にバブル時代のイディオムを駆使したものです。それは、ときにライヴの一部のMCがすべて安全地帯の曲名で構成されていたため、本人たちが「今のは安全地帯ね」と説明をするほどです。

さらに、彼女たちのキャラクターを決定づけているのは、「お下劣」と形容されることもあるほど下ネタを使いまくっていることでしょう。しかし、彼女たちの下ネタもあくまでバブル時代の雰囲気に準拠したカラッとした下ネタであり、ベタッとした湿気がないところが特徴なのです。

ベッド・インは他のアイドルとTwitterで会話をする際にも、一切下ネタの手を緩めません。それでも誰にも問題視されないのは、ベッド・インが醸し出す、ある種の爽快さゆえでしょう。

ただのイロモノじゃない!ベッド・インのコンセプトの凄さ

しかし、どういう経緯でベッド・インのようなユニットが誕生したのでしょうか? それは、中尊寺まいは「例のK」、益子寺かおりは「妖精達」など、ともにバンド活動をしてきたこととも関係しています。過去のインタビューで彼女たちは、バンド・シーンで男性たちに舐められてきたとも語っています。そうした男尊女卑的な価値観へのアンチテーゼが、女性たちが自身の性をも武器にしていたバブル時代へとベッド・インを向かわせたのでしょう。イロモノにも見えることもあるかもしれないベッド・インの活動は、実は本質的にはフェミニズムに通じるものがあります。

それは、彼女たちがライヴ中にビキニ姿になろうが、ファンの歓声にあえぎ声で応答しようが、「女性による男性への媚び」が一切ないことからも明白です。ベッド・インがという「アイドル」が男性のみならず非常に多数の女性に支持されているのは、そうしたベッド・インのスタンスが常に堅持されているからでしょう。そして、バブル時代を基本にしたコンセプトのもと、信念とキャラクターが結びついたときに生み出されたのは、強烈なユーモアでした。それは明快にして嫌みがなく、同時に高い強度を誇るものでした。

ベッド・インのデビュー・シングルワケあり DANCE たてついて / POISON~プワゾン~」がリリースされたのは2014年のことです。しかも、その形態は8センチ短冊CDシングルというバブル時代仕様。彼女たちの登場は、ちょっとした事件のようでもあり、「これは反則だ、きっと売れる」と思わせるのに充分なものでした。別に私に先見の明があったわけではありません。それほどまでに他に類を見ないキャラクターであり、当初からすでに彼女たちの言動は「濃い」ものだったからです。

完璧な時代考証!ブレないベッド・インの魅力

「ワケあり DANCE たてついて / POISON~プワゾン~」を買った日のことは今でも覚えています。なぜなら、新宿のCDショップで「ワケあり DANCE たてついて / POISON~プワゾン~」を買った後、あるライヴハウスに行ったところ、ベッド・インが観客側として会場にいたのです。私がベッド・インにCDを買ったことを話すと、ふたりは「今夜……ベッド・インしちゃうかもね?」と言い放って、一瞬で私を魅了したのでした。「この人たちは本物だ」。そう感じたものです。

ディティールにこだわるのもベッド・インの特徴です。メンバーが中古の写真集やVHSテープを買っていると発言しているように、彼女たちのヴィジュアルは地道な時代考証の成果であるとも言えます。その真価が発揮されたのが、ブロマイドで有名な浅草マルベル堂とのコラボイベントだったと言えるでしょう。

そのイベントは、ファンがベッド・インの手によってバブル時代の髪型、メイク、衣装になる「バブル・オン」が施され、写真撮影してもらえるというものでした。そこに私の友人の女の子が3人参加していたのですが、できあがった写真を見ると、「いたいた、こういう人!」と言わずにはいられないクオリティだったのです。ベッド・インはバブル時代を見事に呼び起こしてしまいます。

キャラだけじゃない!ベッド・インは音楽性も唯一無二!

そして、ベッド・インについて決して見逃してはいけない部分は、音楽活動への真摯さです。2016年1月17日に渋谷WWWで開催されたワンマンライヴでは、男性メンバー4人を従えての「ベッド・イン with パートタイムラバーズ」として、実質的に6人組バンドとして大半の楽曲を生演奏しました。ギターを豪快に弾きまくる中尊寺まいと、声量も豊かなヴォーカルを聴かせる益子寺かおりの姿を見たら、ベッド・インのミュージシャンとしての力量に驚く人も多いことでしょう。

近作のCDでは、ヒットメーカーであるクリエイターチームのagehaspringsの全面監修のもと楽曲を制作しつつも、ライヴではバンド畑というルーツに忠実である点がベッド・インらしいのです。工藤静香の「嵐の素顔」、荻野目洋子の「ダンシング・ヒーロー」、アン・ルイスの「あゝ無情」、SHOW-YAの「限界LOVERS」、バービーボーイズの「暗闇でDANCE」などなど、カヴァー曲の選曲もライヴでの楽しみのひとつです。

ベッド・インのライヴは、キャラクターの強烈さと、音楽面での生真面目さが、絶妙なバランスで両立している空間です。会場を見渡せば、フロアを埋め尽くしているのは若者からバブル体験世代まで幅広く、まさに老若男女。その光景を見ていると、性別や世代を問わずに支持されるベッド・インが、より多くの人に知られて大ブレイクする日はそう遠くないと確信してしまうのです。

 

 

◆ 文/宗像明将

1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」「Yahoo!ニュース個人」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。

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