ウイルス性胃腸炎が増加傾向
エンタメNEWS2025年10月31日7:30 AM
 これから旬! でも加熱が不十分な二枚貝には注意
これから旬! でも加熱が不十分な二枚貝には注意
インフルエンザや新型コロナウイルスなどの感染症が流行中のこの秋。だが、流行っているのはそれだけではない。とくに現在、増加傾向にあり、秋から冬にかけて感染者が増える恐れがあるのが、ノロウイルスに代表されるウイルス性の胃腸炎だ。家族内での感染も多いというウイルス性胃腸炎の傾向と対策について、クリニックフォア・総合内科の井上隆博先生に話を聞いた。
■家族が順番に…、診療の現場でも増えるウイルス性胃腸炎の患者
──現在、さまざまな感染症が流行していますが、ウイルス性の胃腸炎も増えているようですね。
「今年は、感染性胃腸炎の報告数が年初から例年よりも多く、細菌性・ウイルス性のいずれの原因によるものも増加傾向にあり、その傾向は夏以降も続いています。実際、診療の現場でもウイルス性胃腸炎の患者さんが増えているように感じます。特にお子さんをきっかけに家庭内で感染が広がるケースが多く、家族が順番に感染したという相談も珍しくありません」
――ウイルス性胃腸炎とはどのような感染症なのでしょうか?
「ウイルス性胃腸炎は、ウイルスが胃や腸に感染して炎症を起こす疾患です。主な症状は嘔吐や下痢、腹痛、発熱などで、いわゆる『おなかの風邪』と呼ばれることもあります。原因となるウイルスで代表的なものが、ノロウイルスとロタウイルスです。感染経路の中心は経口感染で、感染した方の嘔吐物や排泄物に含まれるウイルスが、手や食べ物などを介して口から体内に入ることで感染します」
――なるほど。
「たとえば、トイレの後に手洗いが不十分なままドアノブや食器に触れ、それを他の人が触れた手で食事を摂ることで感染が広がるといったケースです。また、ウイルスで汚染された食物や水を摂取することで感染することもあります。特にノロウイルスは、加熱が不十分な二枚貝(カキなど)を介して感染することが知られています。
さらに嘔吐や下痢時にウイルスを含む細かい水滴が飛び散ったり、トイレで便座の蓋を閉めずに水を流すとウイルスが微細な粒子として空気中に拡散したりすることもあり、飛沫感染を起こすことがあります。乾燥した嘔吐物や便が掃除の際に、舞い上がって吸い込まれることで感染が広がることも報告されており、家庭内や施設での集団感染の一因になります」
――まず、ノロウイルスについて教えてください。
「ノロウイルスは乳幼児から高齢者まで、幅広い年齢層に感染し症状を引き起こすウイルスです。主な流行時期は11月から2月頃ですが、型の異なるウイルスの型が存在するため、年間を通じて感染することがあります。潜伏期間は12~48時間で、嘔吐、下痢、腹痛、軽い発熱などの症状がみられます。
多くの場合、症状は比較的軽く、数日で回復しますが、感染力が非常に強く少量のウイルスでも発症するとされています。また、一度感染しても免疫が長くは続かないため、型の異なるウイルスに繰り返し感染する恐れがあります」
――ロタウイルスは?
「ロタウイルスは主に乳幼児に多く見られる感染性胃腸炎で、例年3から5月頃に流行のピークを迎えることが多いとされています。潜伏期間は数日程度で嘔吐、下痢、腹痛、発熱などの症状を引き起こします。特に初めて感染した時には重症化しやすい傾向があり、乳幼児では脱水による合併症を起こすこともあるため注意が必要です。
大人も感染することはありますが、多くは過去の感染で免疫を持っており、症状が出ても軽く済むことがほとんどです。なお、ロタウイルスには乳幼児を対象とした経口ワクチンがあり、重症化予防に有効とされています。定期接種として、生後2ヵ月からの接種が推奨されています」
■複数のウイルスが同時に流行、家庭内ではどう対処すべき?
──ウイルス性胃腸炎が増えた背景は何か考えられますか?
「いくつかの要因が重なっていると考えられます。まず、コロナ禍で手洗いやマスクの着用、消毒などの感染対策が徹底されたことで、この数年間は胃腸炎などの感染症の流行が少ない状態で落ち着いていました。その結果、感染によって得られる免疫を持つ人が減っており、再び感染が広がりやすくなっている可能性があります。
特に子どもたちが初めて感染するケースことが増えており、保育園や学校・家庭内で感染が広がる傾向が見られます。さらに、今年はノロウイルスだけでなく、ロタウイルスやサポウイルスなど複数のウイルスが同時に流行していることも、流行が長く続いていることに関連しているかもしれません」
――ウイルス性胃腸炎に感染すると大変だとよく聞きますが、治療法は?
「ウイルス性胃腸炎に特効薬はなく、水分をしっかり補給して安静に過ごすなどの対症療法が中心となります。下痢、嘔吐が続くと体内の水分や電解質が失われ、脱水症状を起こす恐れがあるため、こまめな水分補給が大切になります」
――対症療法しかないとなると、不安になりますね…。
「体調がつらいときには、オンライン診療を活用するのも一つです。症状に応じた薬の処方や対面診療の受診が必要かどうかを医師と相談してもらうと良いと思います。また、尿の回数が減る・唇や口の乾燥が強い・全身の強いだるさがある、などの症状があらわれた際には、脱水症状や重症化のサインの可能性があります。そうした場合には、速やかに医療機関で医師の診察を受けることをおすすめします」
──家庭内など身近なところで感染が広がりそうですが、注意点を教えてください。
「嘔吐物や排泄物を処理する時は、手袋やマスクを着用し、ペーパータオルなどで拭き取ったあとに、次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤など)でしっかり消毒するようにしてください。嘔吐物が乾燥するとウイルスを含んだ微粒子が空気中に舞い上がることがあり、感染に繋がる恐れがあるため、換気をしながら処理をすることが大切です。
まずは『処理、換気、消毒』を意識してください。また、家族内でのタオルの共用は避け、衣服・寝具は分けて洗い、乾燥機で高温乾燥することも有効です。また調理や食事の前、トイレの後など、普段から手洗いやうがいを徹底することも大切です」
(文:衣輪晋一)
ORICON NEWS(提供:オリコン)
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