三谷幸喜の“観察眼”が生む脚本
エンタメNEWS2025年9月30日12:05 PM
10月1日スタート『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』より(C)フジテレビ
三谷幸喜(64)が脚本、主演に菅田将暉(32)を迎えるフジテレビ水10ドラマ『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(毎週水曜 後10:00※初回30分拡大)が10月1日にスタートする。放送を直前に控える中、同作の金城綾香プロデューサーが取材に応じた。三谷が実に25年ぶりの民放GP帯連ドラ脚本を務めることになった経緯や、キャスト陣の俳優としての魅力など、同作の裏話についても語ってくれた。
【写真】似てる…!?三谷幸喜をモチーフにした放送作家を演じた神木隆之介
本作は1984年の渋谷を舞台にした青春群像劇で、三谷自身の経験に基づいた要素を含んだ完全オリジナルストーリー。菅田は、主人公で成功を夢見る演劇青年・久部三成(くべ・みつなり)を演じる。共演には二階堂ふみ(31)、神木隆之介(32)、浜辺美波(25)という超豪華な顔ぶれが集結した。
希望に満ち、好景気に浮き足立つ世相の一方で、渋谷の片隅にはまだ何者でもない若者たちの苦悩と挫折、時に恋模様もあった。栄光を追いかける者、恋に破れる者、迷惑で厄介な者、街を飛び出したい者…。一癖も二癖もあるがゆえ、不器用で生き方ベタ。端から見たら有象無象、でも本人たちは至って真面目で一生懸命。そんな“人間くさい”人たちが、目と目を合わせ、心と心を通わせ、時に激しく衝突しながらもエネルギッシュに生きた「1984年」という時代を、三谷ワールド全開で笑いと涙いっぱいに描いていく。
――本作で三谷幸喜氏にオファーした経緯を教えてください。
実は私がAPを初めてやったのが(三谷が脚本を務めた)フジテレビ開局55周年記念ドラマの『オリエント急行殺人事件』だったんです。当時は一番下だったので、三谷さんに台本を送ったり、タクシーを手配したりとか。そんなお仕事をさせてもらったんです。
私がフジテレビに入社したのは、古畑任三郎が大好きだったからです。自分が入社2年目くらいのときに、先輩の紹介で三谷さんに「三谷作品が好きです」とお話もできたんです。なので、何となく三谷さんの作品がまたやりたいなって思っていて、いつも手を上げさせてもらっていたんです。そんなとき、2022年ごろに「三谷さんが連ドラに興味があるらしい」という話を小耳にはさんだので、「ご一緒しませんか」とお声がけしたのが、このドラマの始まりでした。
――本作のキャスティングの経緯を教えてください。
本作はオリジナルで、私も何が送られてくるのか分からなかった。そんな中、三谷さんに喫茶店に呼ばれたんです。そこではすでに11話分のタイトル、誰が出てくるかを記載した香盤表のようなものを作られていて、その時のお話と、順次上がってくる原稿を基に三谷さんと相談しながらキャストを決めていきました。一番最初に三谷さんが決めたのは、菅田将暉さんでしたね。蓬莱役に関しては三谷さんご自身のエッセンスも入れてらっしゃるので、いろいろお話させていただいた中で、神木隆之介さんに決まったんです。
――主要キャストを演じた俳優陣について、本作の撮影を通じて感じたことを教えてください。
菅田さんは、90年代生まれでいらっしゃるけど、80年代の若者を本当に見事に演じられている。どこか下町の香りがする「昭和感」が絶えずしてくるのがすごいなと思って見ていました。
また二階堂さんは作品に対してもそうですし、いろんなものに対しての造詣が深いので、アイデアをたくさん持っていました。今はあまり見ることのないパーマのヘアスタイルは二階堂さんのアイデアなんです。あんなに似合う人っているんだと思うくらいお似合いだったので、ご本人の発想力は素晴らしいなと思いました。
神木さんは柔らかくて面白い方(笑)なんですが、お芝居はバチッと決める。ご自身のパーソナルのかわいらしいところと、演じているところの温度差みたいなものが、不思議な方だなと。
浜辺さんは、昭和の服ってデザインが奇抜なものが多いんですが、どれを着ても自分のものにする。またリアクションをした時に、自分の顔がどんなに崩れてもいいと思っている。白目を向いたりとか、ため息をついたり、また怒っている時の顔が、自分がどう見られてもいいから、心の中を表現するという崩れ方をしてくださる。瞬発力もあるし、まだ20代半ばだと思うと、これからどういう作品でまた違う表情を見せて下さるのか、楽しみです!
――撮影現場の雰囲気はどうでしたか?
豪華な方々が集まってくださったんですけど、皆さんすごく謙虚で、劇団に近い雰囲気でした。練習している人がいたり、ご飯を食べている人がいたり、他の仕事から忙しく駆け込んでくる人もいたりとか、ちょっと劇団であり、社会人の部活のような。
皆さん気負うことなく、引っ込むことなくできたのかなと思います。
――金城Pが思う三谷さんの脚本の面白さを教えてください。
登場人物全員に人間的なおかしさと、ちょっとダメなところが見えるところです。古畑(任三郎)さんも結構ダメな人だと思いますし、『鎌倉殿の13人』に出ていた方は、皆さん欠点があるような気がするんです。それでもキャラクターとして愛せてしまうようなところがある。それって三谷さんの優しい目線やいたずら心、人間に対する観察眼のようなものが表れているんだと思います。
――本作ではそのようなエッセンスはどれくらい反映されているんでしょうか?
(三谷さんのような)そうした目線でみんなが他の人を見てあげれば、この世界もちょっと平和になるのにと思います。このドラマの登場人物は全員とがっていて、主人公もなかなかやばい人でもあります(笑)。でも他の登場人物も「なんで今そんなこと言うの」「そんな言い方ないよね」みたいなことをやる。でもこの作品の中ではそれぞれの出過ぎちゃっているところを「あの人はそういう人だからしょうがないよね」って、みんなが許容している世界なんですよね。三谷さんの世界って、それがなんかとても心地いいし、優しい。
今回は特に、みんなちょっとずつ本当にダメな人なので、むしろ色濃く出ているのかなと思います。
――本作は制作陣から見てもフジテレビとして特に注力している作品だと感じています。プロデューサーとしてはどう感じていますか?
不安や心配を感じることはあまりないのですが、キャスティングをした時も、三谷さんと「この役はこの人がいいですね!」「話します!」「やってくれます!」みたいな形で話が進んでいたんです。でも顔合わせの前の日に、スタッフで準備をしていたときに「これは大変な番組になったのかもしれない」みたいな気持ちになりましたね(笑)。
――これまで多くの脚本家の方とお仕事されてきたと思いますが、三谷幸喜さんならではの部分はありましたか?
すごいなと思ったことは、書けないっていう瞬間がない。例えば作家さんとの間で、「先週の打ち合わせでやってみたけどうまくいかなくて、もう1回打ち合わせしましょう」とかは自然なことなんですけど、三谷さんはどんどん書く。そこがすごいなって。
――本作のタイトルはどのように決まったのでしょうか?
本作では脚本のイメージを見た段階で既にほぼ近いタイトルが入っていたんです。でも私の率直な感想は「変わったタイトルだな(笑)」と。でもそのタイトルを聞いたのは2022年とかだったのですが、だんだん馴染んできたんです。私的には「この世が舞台で、あの世が楽屋」みたいなイメージ。この世界で一生懸命やるんですけど、天国に行ったら、「大変な人生だったね」っていうのが、舞台が終わった後に打ち上げするような感覚になって、すごく気に入っていたんです。なんとなく、体に馴染んでくるものはいいのかなと。
――本作が展開していく中で、金城P自身が注目してほしいキャラクターはいますか?
浜辺美波さん演じる江頭樹里ちゃんですかね。実はちょっとずつ彼女の考え方が変わっていくのが物語と連動しているので、彼女を追いかけて見ると、ドラマも楽しく見ることができるのかなと思います。
ORICON NEWS(提供:オリコン)
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