横浜市、路上喫煙ゼロの理想と現実

#シンクタンク

エンタメNEWS2026年2月13日9:10 AM

『GREEN×EXPO 2027(国際園芸博覧会)』まで約1年

 2027年3月開幕の国際園芸博覧会を前に、横浜市が市内全域での路上喫煙禁止に向けた条例改正を検討している。非喫煙者にとって、受動喫煙やポイ捨てを減らす規制強化は歓迎すべき動きだ。一方、同様の施策を先行した大阪市では、十分な準備期間と喫煙所整備があっても、違反や混乱が完全には解消されていない。準備期間が限られる横浜市の取り組みは果たして現実的なのか。国際都市に求められる“実効性ある喫煙対策”とは?

【画像】横浜市に必要な喫煙所数は…これホントに実現可能?

■約3年準備しても…万博前に混乱を来たした大阪市の教訓

 横浜市が2027年3月に開幕する『GREEN×EXPO 2027(国際園芸博覧会)』を見据え、「市内全域での路上喫煙禁止」を盛り込んだ「ポイ捨て防止条例」の改正を検討している。もともとの「ポイ捨て防止条例」は、市内全域で空き缶やたばこの吸い殻のポイ捨てを禁止、歩きたばこをしないことなどが市民の責務とされる内容。市は、2026年夏の市議会に同条例の改正案を提出し、2027年1月ごろの施行を目指す方針だ。すでに2025年4月から市立公園は全面禁煙となっており、屋外空間における喫煙規制は段階的に強化されてきた。

 路上喫煙の規制は、非喫煙者にとって明確なメリットがある。たばこの煙やにおいによる不快感だけでなく、歩きたばこによるやけどの危険、吸い殻のポイ捨てといった問題を抑止できるからだ。特に子どもや高齢者、妊娠中の人にとって、屋外であっても避けられない受動喫煙は長年の課題だった。市民から規制強化を求める声が多いのも、こうした背景がある。

 一方で、「全面禁止」という言葉がそのまま実効性を担保するわけではない。比較対象として必ず挙がるのが、大阪・関西万博を前に市内全域で路上喫煙を禁止した大阪市のケースだ。大阪市は2025年1月に条例を施行し、違反者に過料を科すと同時に、市内300ヵ所以上の喫煙所を整備してきた。

 しかし、施行後も路上喫煙が完全になくなったわけではない。喫煙所の不足やエリアごとの偏りから、喫煙者が路地裏や駅周辺に滞留するケースも確認されている。大阪市自身も条例施行後に実態調査を行い、路上喫煙が多く確認されたエリアを中心に、2026年度以降、新たに65ヵ所の喫煙所を整備する方針を示した。規制だけで完結するのではなく、運用を続けながら修正を重ねているのが現状だ。

 横浜市の場合、状況はさらに厳しい。大阪市が構想段階から条例施行までに約3年をかけたのに対し、横浜市に残された準備期間は実質1年程度とされる。条例が想定通り2027年1月に施行された場合、国際園芸博覧会の開幕まで約2ヵ月しかない。周知、指導体制の整備、喫煙所の確保をこの短期間でどこまで進められるのかは、大きな課題だ。

 その“受け皿”に関しては、民間シンクタンクの試算が示唆的だ。プランワークス政策研究所はKDDIのモバイル空間統計を基に、市内500mメッシュごとの滞在人口から必要喫煙所数を算定。横浜市全域で614ヵ所が目安と推計した。特に「喫煙禁止地区」8エリアでは、既存17ヵ所に対して必要91ヵ所と乖離が大きい。横浜駅周辺は必要27ヵ所に対し既存3ヵ所、新横浜は12ヵ所に対し2ヵ所と、人流が集中するエリアほど不足が顕著だ。

 煙やポイ捨てを防ぐという観点に立てば、喫煙所の整備は決して「喫煙者のためだけ」の施策ではない。喫煙行動を特定の場所に集約することで、非喫煙者が煙にさらされる場面を減らすためのインフラとも言える。実際、非喫煙者の多くが「喫煙所は必要」と回答している調査結果もあり、規制と受け皿は本来セットで考えるべきものだ。

■禁止するなら“受け皿”を…、求められる現実的な対策とは?

 さらに見逃せないのが、訪日外国人への対応である。訪日客が急増する中、日本より喫煙率の高い国・地域からの来訪者も少なくない。そうした人々にとって、「どこで吸えるのかわからない」「案内が日本語中心で理解できない」という状況は、結果的に路上喫煙を減らせない要因になりかねない。ルールの厳しさ以上に、わかりやすい表示や案内の有無が行動を左右する場面も多い。

 では、条例施行までに何が求められるのか。横浜市としても、前述のような懸念点に配慮した取り組みは予定されているが、果たしてそれは十分と言えるのか。重要なのは、喫煙行動の受け皿となる環境整備、市民や来街者への十分な周知、そして施行後も実態を検証し柔軟に見直していく姿勢、この3点に集約されるだろう。もちろん、それらを可能にする予算の確保も急務と言える。

 横浜市が掲げる「国際都市にふさわしい環境」は、単なる全面禁止だけで実現するものではない。非喫煙者を守るという大義を軸に据えつつ、現実の人の動きや行動を踏まえた対策をどこまで積み上げられるか。条例改正は、その成否を試すスタートラインに立ったにすぎない。

 2月13日(金)から約1ヵ月間、横浜市では条例改正に対する市民の意見を募集する。これらの声を踏まえて、どのような展開となるか注視したい。

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